深い河

深い河 (講談社文庫)

深い河 (講談社文庫)

どーーーーーーん…
簡単に言ってしまえば心に瑕がある大人たちがインドのガンジス河に向かい、当人たちの闇と向かい合うお話なのだが、なんかなーもうなーそういうことじゃねえんだよなー…。五年くらい私の部屋の本棚で肥やしになってたのだが、あまりにも色々とタイムリーでなあ…。今まさに読むべきというか、待ってててくれたんだなあという感じであったよ。なんというか、生意気な事をいうなら、五年前だったら磯辺の、美津子の、沼田の、木口の、大津の、登場人物たちのありように涙したと思うのだが、今は、いちいち自分の事が浮かんで、胸が裂けそうであった。ビックリするくらい誰も報われないのだが、ないのだがなあ。だからこそなあー。ぐぉーーーん。


何年か前爆笑問題の太田がこの深い河をラジオで強く薦めていて「どんなにちっぽけで見苦しい人間でも、生きていていいのだ」という事を救いとして言っていたのだが、この小説自体がそういう仕組みになっている訳ではなくて、この登場人物たちに触れてそう思う気持ちの太田自身の優しさと温かさが彼の救いになっているのだと思う。外から何かが迎えに来たり降って来たりすることはない事を、そして仮に来たとしてもやはりなんの救いにならない事も知っているおとなの救いというのは多分そういう事だというような事を考えました。ごーーーーん。

私はお話を読んだり絵を見たりするのはガソリンとか水を補給するようなもので摂らないと心が動かなくなるので(ちなみにこれとリアル対人とで起こる感情とは全く別の次元の話です。他の人は知らないがワタシには必要)すぐ摂れてすぐ消化できる燃費のいいライトノベルとかBLとかはとてもありがたいものです。文学とかは面白いのですが、読むのも消化するのも時間がかかって、ものすごくお腹(心)がすいてるのにナカナカ身体に取り込めないのでとてもフラストレーションがたまります。読み切ればすごく滋養にも栄養にもなるんですけどね。なかなかどうも。


だから、どちらにも振り分けがたい所謂「越境」と呼ばれる、軽すぎず、重すぎず、中途半端と揶揄されながらも両方の使命を探っているお話が大好きです。萌えで人をつっといて裏切って現実ヅラしてるようなやっすいものじゃなくて、燃費の良さが手軽く読ませるためでなく伝えるために、消化しやすさが現実と共に生きて行く勇気を与えようとするやさしさのためにあるものが好きです。もちろんそんなものばかりじゃないっつーか正直どうでもいいものの方が断然多いですが、そんな中いつも何かを探っているものがほんとうにあって、めぐりあうとまずこの心映えにであえてよかったなあとか思います。

楢崎先生とまんじ君

楢崎先生とまんじ君 (二見シャレード文庫 ふ 3-14)

楢崎先生とまんじ君 (二見シャレード文庫 ふ 3-14)

前作の茨木さんと京橋君を読んだとき、タイトルの彼らが嫌いじゃないけどそんなにそんなんでもなく、通りすがるように出て来たクールビューティー(ブッ)内科医楢崎先生とお弁当屋さんでアルバイトする大型犬のようなまんじ君の方のお話の方がよみたいなーと思ってたらまんまと彼らのお話が出たのでウハウハとかってきた。うはうは。
椹野さんって職人というか、そんなに個人的な情で書かないというか、人が近づいて行く過程を生い立ち…というか設定頼りにしてるように感じられるところがあって(正直まんじ君のおいたちと境遇はまたかーとか思った)誰が見ても無理がない代わりに、後に残らない感じがワタシ的にあるのですが、その辺が複雑じゃない分、しっかりしてる割に流されやすい楢崎さんと一直線で善良なまんじ君の相性とかキャラクターを何も考えずにゆっくりと味わえてたのしかったです。というか私はこういう組み合わせによわい。わかっててもメロメロさ。フフフ。そんな訳でキャラが合わないと淡白というか退屈な感が正直あるのだが、合えばプロフェッショナルなまでに楽しませてくれますです。はい。

ペテン師一山400円

ペテン師一山400円 (新書館ウィングス文庫)

ペテン師一山400円 (新書館ウィングス文庫)

とっても楽しかったです。中学二年の夏、曾祖母が危篤と連絡があって純太は本家を訪れたが、その一族は詐欺師の一族で、遺産を相続する条件として「一族らしく詐欺で目標金額を達成したもの」と出され、あれよあれよとうさんくさい親戚のお兄さん研士と組んで目標2000万の詐欺ゲームに参加することになるが、実は純太も一族の血を引いて特殊な能力があって…という、毎度よくぞここまでというくらい無茶な設定を立ててきてますが、できること・できないこと・マンガっぽいたのしさ・情に訴えてもいい所・悪い所にはっきり線がひいてあって、てんこもりな割に何も考えずに気持ちよく楽しめました。

「詐欺師の話なんてめんどくさいなー」とか「後味悪かったらやだなー」とか若干思ってたんですが、知識がちゃんとお話に消化されていてわかりやすく(職業うんちくが鼻につくBLとかあるよね…)いかにも現代っ子ながら性根がまっすぐで少年らしい純太と、スカして頭が切れて腕の立つ詐欺師なのにいざというときあんまり頼りにならないギャップがいい研士とのコンビを通して、騙される人の都合の良さというか、自分の都合で物事をよいほうに考えてしまう調子のよさが意地悪でなくハッキリ書いてあっておもしろかったです。バーさんのみもふたもなさとか、ツンデレおじさん捨身のこまやかああーな描かれようとか(ひいきとしかいいようがない)キャラもいきいきしててよかったです。彼らが好きになったのでもう一本の話も彼らを中心にしてほしかったのですが、パートタイムナニ-もそうだったんだけど、新キャラ足して話を回して研士が空気気味になってるのがちょっと残念だった(^^;)あと嬉野さんは女書くのスキじゃないんだろうか(^^;;) 多少偏っても無理せず書きたい事だけ書いてくれると嬉しいナリ。

幻魔大戦 1

幻魔大戦 (1) (Aspect novels)

幻魔大戦 (1) (Aspect novels)

未来を見る力を持つルナ姫は、宇宙意識フロイより全宇宙の破壊者幻魔の襲来を識り、それに対抗すべく世界中から超能力者を探し求め、東丈を見つけ出すが…というド基本…というかもうこの手のお話の先祖くらいの領域にいらっしゃって、例えば今のチビッコがご家庭で楽しめるRPGの先祖のひとつのDQ1をやってもどっかで見たような気持ちにしかならないように、何番煎じとそれでもごくまれにおこる進化を作品と信じて享受し続け、マスコミが本当の事よりも割と偏った考えと力に寄っている事も、新興宗教の正体も、受験の行く末も、梶原一騎イズムがもたらしたものも、知識として公開されてしまって、まえがきの「人類の中には、神とか悪魔、霊とか玄妙な言葉を耳にしただけで、頭がくわっと灼熱するタイプの人々が結構な割合で存在する!」という叫びもナチュラルに「はあそうですね」なんて言われちゃう今日び、「いかにも当時」なこのお話を読む意味はなんだろうとかチラッと思ったりしましたが、人の心も起こる事も過剰に苛烈なこの世界には、真似パクリリスペクトオマージュ諸々に寄ったら決して掬い取れない見苦しいまでの個人と誰にも犯せない清潔さがあって、すごいなあと思いました。飛行機が落ちようが、大宇宙の意志を聞こうが、学校だろうが、家庭だろうが、ずーーーっとアクセルもアンプも全開フルスロットルがなりっぱなし手加減なし。というか男性が書いたと思えん位女性の言葉の刺さりっぷりがすげーー正直全宇宙を無に返す幻魔より厳しい(笑)リスペクトじゃ書けないぜ。どこまでもどこまでも人間味に満ちあふれていて、先祖って大事だなあと思った。

ドラゴンクエストIX 星空の守り人

ドラゴンクエストIX 星空の守り人

9…というか5〜8未クリアなので1〜4もそうだったのだが、DQって攻略本を見て全く無駄なく効率よくゴールだけを目指すとただの「大味な子供向けゲーム」でしかない。売り上げと評判を聞いてやって「そんなに?」と思ってる人が沢山いそうだが、実はこの「大味」と「子供向け」つーのが最大にして最強の武器なんである。「そういえばあれどうしてるだろう」とか、「あっあれつくってみよう」とか「あっちいっちゃおう」とか、子供が気まぐれにどんっなに無駄なこと思いついても絶対に破錠しない。最低限の縛りが凄まじく磐石の体勢で敷いてあって、歯ごたえがあると称して突き放すでなく、目が離せないと称して目線をガッチリ固定してくるでもなく、オンラインゲームほど自分の個性を発揮させられて抜けられなくなるほどでもなく、最大公約数の大筋を元に個々の冒険をだらだらーーっと作ることができるのだな。そのために全く気づかないくらい完全無欠の中庸が貫かれていて、だから中庸にプレイすると中庸なゲームでしかない。否定的な感想見ていると「ずいぶんプレイヤーはゲームのほうに何も考えずに中庸たることを求められているのだなあ」とか思うのだが、まあともかく、なんかつまらないと思うなら攻略本を閉じて、宝箱の一つや二つ見逃して、キャラの一人を帰して何の意味もなく徹底的に好みのキャラを一人作ってレベル1のそいつをかばいながら自分の頭でやりくりしながら進めてみることをお勧めする。それで面白いかどうかは好みなのでわからないが、絶対ボロがでないことと、クリアできることは保障する。少なくともDQのほうはDQたる仕事をきっちりやっている。と思う。

なんか世の中がドラクエで盛り上がってるのでドラクエの話をする。ちなみに私のドラクエ体験は全てファミコンです。スーパーですらありません。あしからず。


□わくわくしたドラクエ
4でさーアリーナが闘技場にひとりで出ることになりますやん?控え室で小さかった音楽が、扉を開けて出て行くと歓声とともにでかくなるのがとてもわくわくした。あれのおかげでいまだに中央競馬のファンファーレ聴くたびにわくわくする。単純。


□びっくりしたドラクエ
3でさーロマリアでしたっけ、王様と入れ替わる奴。誰も彼もが王様として当たり前のように扱ってきて、え?とか思ってる時に囚人にぼそっと「おうさま、あんたはあまいよ」と言われてちびった。今ならなんかしら道があるだろーとは思うが、当時はやたらさみしいところにいる囚人だけに言われたのが妙に説得力があって(今思えばドラクエって社会とアウトローっていうのが結構当たり前にあったな)あれ、やり直し!?とか思った。


□今思うとなドラクエ
3でさー黄金の腕輪ってありましたやん?すばやくなるかわりに敵をムチャクチャひきよせるやつ。あれなんでか武道家に装備させて、おおさすがにすばやいとか言って悦に入ってましてん。…当時の私のコドモ脳を察するに「いいところをのばすべきだ!」とか考えてたんじゃ…ないかな…。ははは…。そんであれがあるイシスの砂漠のあたりって緑色のカニがいましたやん。防御力が高いけど攻撃魔法とルカニルカナンかければ一発のあいつ。なんか…武道家入れるために魔法使い入れてなかったような気が…。理由は多分男がじじいなのと女の方がいまいち可愛くなかったから…だったような…。そこへ来て、私勇者ってほぼ魔法使うもんじゃないと思い込んでたのだな。強いし。ホイミは僧侶が使うものだし、ギラで勇者の乏しいMP使うくらいならいざという時のホイミの予備に位にしか考えておらず、ルカニを覚えているのに気づいてなかったのだな。……黄金の腕輪に引き寄せられたカニ対峙する肉弾チーム。割合非力な武道家が全く無駄な特攻をかけ、一方的に攻撃され続けるため後手後手にならざるをえないホイミを僧侶がかけ続け、満遍なく攻撃されたあと勇者がないよりましな攻撃をして、牛のよーにのんびりと最後に一番力がある戦士が攻撃して…という死のスパイラルにまーーーはまって死にまくった。今、今思えば魔法使いを酒場で作ってつれてきて、最低限ギラを覚えさせて腕輪装備させれば一発でおしまいとか、せめて僧侶に腕輪を装備して回復&特殊魔法をかけさせて、役に立たない武道家は薬草で回復を、とかすぐ思い至るのだが、当時の純粋という名の馬鹿だった私は「逃げるしかない!」と思い立ち、逃げたねー…。あの広い砂漠を…。逃げながら思ったねー…。「ドラクエってむずかしいなあ」と…。バーカバーカ。で、逃げ込んだのがピラミッド。あの防御力はそうでもないが打たれ強くてHPはやたら高いめんどくさいアンデッドがいっぱいいるピラミッド。「おお!攻撃があたる!」と魔法で焼けば格段に楽なこととホイミも攻撃になる(なったよね?)ことも知らず血で血を洗う泥沼の戦いをし続け、「ボタン」を壁の押すボタンでなく服のボタンだと思い込み床をくまなく探し愚直にさまよい続け(当然だがまた死んだ)「…もしかしてこの腕輪が敵を引き寄せてるのでは?」と気づいたのが全てが終わってピラミッドを出てイシスに戻る(このときルーラって使えたっけ…多分そのMPもなかったのか…)道すがらであった…。なつかしいなあ…。ハハハ…。
私がイースやってるのを見てた弟が「…ボスがよけた所に剣を振りながら投げてくる弾に当たりに行ってるようにしか見えない」と静かに言ったことがあるが、ゲームのセンスのなさに関しては本当に枚挙に暇がない。でもその分他人様より倍楽しんでたような気がする。(負け惜しみかよ)


□ドラマCDなドラクエ
けっこー前ドラクエドラマCDになったましたやん?ジャケットがいのまたむつみで、ブックレットになってて、石坂浩二がナレーションやってたやつ。仕事場の人がアレを買い集めてて聞いていたのだが、DQ5のドラマがまあすごくて、ゲームだとそう感じないのかもしれないが、主人公の人生って大概散々ですやん。わたしはやったことないのですが、孤独だわ妻子とは引き裂かれるわすれ違うわ奴隷として売られるわまーーー大変。覚えてないが父親ともろくなことになってないよね?ゲームは主人公にそんなに個性はないが、堀川亮演じる情感漂う名前つきのキャラクターになるとあまりにも切なくて、どーゆーゲームやねんとか思って聞いていたのだが、それらが報われるであろう最終巻がまさかの品切れ。えええええええ。本屋(つーか本屋が問い合わせたエニックス)に言われた買い集めていた人涙目。その当時はヤフオクとか今ほど気軽なものでなくて泣く泣く諦めていたのだが、私といえばその悲惨なストーリー三分の二くらいを知ってしまい、その後リバイバルしまくったDQ5をやる気にもなれずもやもやとした気持ちだけが残ったのだった。とほほ。

ドラマCDで思い出したのだが、DQ3のがナカナカすごかった。暴走が。私はとまとあきのバカヤローと叫んだ。多分出した当時絶対怒られたんじゃないだろーか。聞いたことない人は機会があれば一聴をお勧めする。DQ3の思い出を粉砕されること請け合い。キーワードはカンダタ