れんげ荘

れんげ荘

れんげ荘

ああ…。群ようこの小説読むような、スイートに物別臭いおばはん…も、もとい、大人の女にだけはなるまいと思っていたのに…。矛盾だらけの女の生き方をくどくどと説いて来る母親と忙しいばかりで空虚な会社生活に疲れたキョウコは、全てを捨てて3万のボロアパートへ越して月10万のつましい暮らしを始める…という設定のキャッチーさにまんまとつられて買ってしまった…。この設定にまるでピンと来ない人、特に男子は45歳のおばはんが1人で浮いたり沈んだりしてるだけにしか思えず全くきっぱりはっきり楽しくない…どころか興味も持てなかろうが、それなりのスイートさと自身と重なる所思う所あって楽しく読めてしまった…。ああ…。
45歳までの貯金と退職金を頭割りで月10万で暮らすって理屈は分かるけど健康保険は? とか税金はこの場合どうなるんだ?とか狭いアパートでプチアウトローになったようなこと言ってるけどそもそも小うるさい社会から見たらナンボ稼いでても45歳の女が働きながら独身で実家にいるのも大概マイノリティーだろうとか諸々こまかい所は気になるのだが、このお話の肝心な所はそういう所じゃなくて「そこまでして社会をつくらなきゃいけない?」という個人の気持ちだと思う。家族とか、近所とか、会社とか、人のために社会があるんじゃなくて社会のために人があるような気分へ対するゆるい疑問というか、そういういかにも食うには困らない分何か得体が知れないきょうびが、やっとスタンド・バイ・ミーしたキョウコさんの視点で絶妙なゆるさと甘さとチョコレートに入ってるくらいのビターさで書いてあって素直に読めました。モノのない時代に育った人とか高度成長時代を支えた人とかの、何故か自慢げに苦労話を語るアレに「そんなにその時代がいいなら食うや食わずの時代に(もしくは仕事しかない世の中に)帰れよ」と心の中で思ってる、命なんてかけなくても生きていられるやっぱりスイートな私はそういうほうが本当に思えちゃったりするのだ。
それにしてもやっぱり食うに困らないのに文句ばっかり言ってる母ちゃんの言いようが絶妙じゃのう。この妖精っぷりが腹立つ(笑)でも意地悪な描き方じゃないんだな。キョウコさんがお母さんの期待に意地悪で添えない訳じゃないように。