カンバセイションピース

カンバセイション・ピース (新潮文庫)

カンバセイション・ピース (新潮文庫)

2年前に買って何十ページか読んで数ヶ月おいて、本棚に本がいっぱいあるのになんか読みたくないなあーと思った時に手に取ってまた読んでとかやっててさっき読み終わった。フー。
しかしおかしい。こんな衣食住性食睡眠欲一切ない思考を44才のオッサンが延々と繰り広げて行く話、保坂和志が私のためだけに書いてくれたとしか思えないのだが。感想をたどって行くと皆ほめてて、帯には著者最高傑作!! とか書いてあって、う、ウソだ! 皆ホントにわかってんのか!? 分かってくれるような世の中なら私はもう少し生きやすかったはずだ!!(何様だよ)つーか帯に「小津安二郎の映画のよう」と大絶賛されたなどというトホホなアオリがついてて疑わしいもんだが。絶対ちげえよ! つーかそれ褒めてないし! えっ、そんなことない? 私が間違ってると!? 知るか!!(ワー)


私が育った家は3分の2壊して建て直したので部屋とか記憶の中にしかないのですが、一番臨場感を持って思い出せるのは光と影だよなあと思う。暗くて急な階段の下から見上げると、当時は流行なんだろうが今思うとビンボー臭い茶色の板の壁に踊り場の明かり取りの小さい磨りガラスの窓からオレンジ色の光が落ちていて、その窓が片方開いて網戸になってて、近所の好きなような嫌いなような女の子とその弟の声が聞こえてきて…という感じのことを延々と思い出したなああ…。「だから何よ」って言われたらまあその通りなのだが、私はそういう話が大好きなんでございますよ。とっといて何ヶ月かしたらまた読も。


読んでて思い出したのだが、豊崎社長が何かの本の評のついでに奥さんの台詞の「そんな簡単に共感を得られるようなものばっかり読もうとしないで、中身が全然想像つかないものを読みなさいよ」というのを引用してたことがあって、うわあ〜俗やな〜とか思った。このお話全部読んで引用すんのそこかいな〜。「○○のような」って褒めるのと同じレベルのやるせなさだー。その低俗さが社長のウリかー。