パートタイム・ナニー

パートタイム・ナニー (1) (ウィングス文庫)

パートタイム・ナニー (1) (ウィングス文庫)

とってもおもしろかったです。両親を早くに亡くし祖父の経営する豆腐店で弟と三人つましく暮らす文字どおり質実剛健高校生・剛が、生活費と弟の林間学校の費用のために面接を受けた時給五千円の怪しげなバイトは、ひとつ年上の色々な方向へスーパーなお坊ちゃん・バーソロミュー(通称バブー)の乳母だった、というお話で、もうキャラで8割勝ったも同然であった。真面目で抜け目なく責任感も腕力も機転もありどこまでもちゃんとしていて、つましい生活故に考え方が堅苦しくなりがちなりに相手の美点を受け入れられる情もある剛と、素晴らしい頭脳と果てしない財力と魅力的な容姿を持ちながら、精神はちびっこ同然のおバカさんでまわりを徹底的に巻込むんだけど、その無防備な純粋さゆえに(…っていうとすげえ聞こえがいいなあ(笑))最終的に皆に愛されてしまうバブーが、一方がへこめば一方がそれを埋め、また突き出たらそれを踏み台により高く飛び、見た目丸で違う二人が作用し合い水車のよーに話を回してくれるというか、この二人を追いかけてればもうお話しになってしまうという感じ。素直でよいこな弟・耕太とか、明るい下町のじじい・末太郎とか、見た目がそれっぽいから雇われた執事のスミスさんとか、商店街の人たちとかもまわりを明るく固めてくれて楽しかったです。
あと、貧乏…というか、庶民のつましい暮らしって「四畳半でちゃぶ台」とか「おかずはメザシだけ」とかそういう記号じゃなくて「たまに贅沢するとき何を食べるか」とか「手持ちの中で何を大切にしているか」とかいうことに現れて来ると思うんだけど、嬉野さんはその辺を書くのが異常に上手くて読んでて微笑ましかったです。キャラが走るだけでなく無茶な設定なりに「できること」と「できないこと」をちゃんと割り切ってあって、まとまっててよかったっす。2,3巻も楽しかったけどそちらは新キャラ(つけたし)で回してる感があるというか、いや十分面白かったんだけど、1巻がいちばん二人が輝いていたような気がする(笑)まあとにかく楽しかった!