死なない男に恋した少女

死なない男に恋した少女 (HJ文庫)

死なない男に恋した少女 (HJ文庫)

ウオッすげっすげーーー好き!! 個人的に大ヒット! ヒャッホイ!!


「天才殺人鬼の少女が、死ねない少年に恋をする」というお話で、まあ正しいか正しくないかで言ったら大いに間違ってます。人間はモノじゃないのに「壊れてる人」って言葉がまかり通る今日びにふさわしいお話です。どうがんばってもヒロインが人殺しちゃってるしな。人刺すの気持ちいいゆうてるしな。クギトゾンビですらないしな。でも、私は壊れている事を売り物にする話は好きじゃないんですが(つーかほとんど唾棄)、ふたりとも壊れているなりに、諦めているなりに、手に握りしめているものがあって、それが絶望であっても、いかにも青少年らしいぶっきらぼうさで人として恭子の孤独と寄り添おうとするクギトと、それを求める恭子のさまがだな、そのいじましさが実は弱い人間だからとか小汚い美しさじゃなくて、あくまで頭と身体のどこかが壊れてしまった人間の心の熱さだけでやってて、いいなあと思ったのだな。「生き物は殺しても人はまだ殺したことがない」時に出会わせるとか「クギトのほうも刺されると気持ちがいい」とかいくらでもしゃらくさいやり方があったと思うんだが、それをよしとしない(そこまでいかんかな、好きじゃないとかかな)感じがいいな。と思ったのであります。なんか私が絶対捨ててほしくない最低限の何かは何気なく持っててくれてると言うか。まあそれなかったらただのド変態成分しか残んなくなっちゃうんだけど。


世の中は、なんでもかんでも「法律ではこうなってるんだからダメなものはダメ」と言うような、解釈によっちゃ皆のためにオマエ死ねって言ってる法で死ねばって言いたくなる人もいるし、決まり事を使って薄汚い中和をもって平和を保ったりなどしていて、相対的にみれば恭子はまだましと言えるのかもしれないけどやっぱりこのふたりは間違いなく地獄行きなんだな。幸せになるとしても地獄の裏打ちなのだな。それでもふたりは誰も助けてくれない世界でちゃんと立って、学校の屋上とか、路地裏とか、人目に付かない所で騎上位状態の恭子さんの欲望のままにズコバコとクギトはその死ねない身体で刺されてあげるわけです。…。あれ、やっぱりタダの変態の話だ(笑)まあダメだという人の気持ちはわかるし、弁護もしないけど、私はとってもおもしろかったです。ホホホイ。