哀しみキメラ

哀しみキメラ (電撃文庫)

哀しみキメラ (電撃文庫)

偶然エレベーターに乗り合わせた男女4人が「モノ」に襲われ、人ならざるモノになってしまい…という、とても熱量の高い内容だったと思うのですが、むき出しのコンクリートの壁のような、葛きりのような、ひんやりした静かな文章がそれを覆っていて、なんだか独特の味わいがありました。カーッと燃えて酔う程愚かでもなく、かといって全てを運命として捨てられるほど利口でもなく、ただただ理不尽な状況の中拾ったり拾われたり、幸せのようなものをうっかり見出したりとかする「ああ、こんなことがあったらこうなるだろうなあ」という感じの彼らのゆく道を最後まで目を離す事なく読まされました。おもしろかったというには悲しいし、カタルシスがあるというにはどこか冷静な目があるし、ライトノベル特有の強烈な快楽は薄いのですが、彼らの心のありようがていねいに重ねられていて、ひきつけられました。面白かったけど続きはすぐ読みたーい! という感じではないなァ。間が欲しい。ぎゅう。つーか次何するだ? 楽しみ。