チェンジリング・シー

チェンジリング・シー (ルルル文庫)

チェンジリング・シー (ルルル文庫)

おお! パトリシア・A・マキリップだ! やるなあルルル文庫! ってマキリップ読んだ事ないけど(^^;)
随分前岡野玲子が妖女サイベルの呼び声をコーリングとゆータイトルで漫画化してて、それが大層すばらしかったのでいずれ原作を…とか思っててずるずると現在に至り(ありがち)ふとこの作品がルルルから出てたので手を出してみることに。


この作品も妖女サイベルの呼び声も、5行くらいに筋立てを要約してそれだけ見ると大層ミもフタもないというか、こんなにも幻想的でありながら芯(女性的なというか…)の所が現実的というか「え、あ、まあ、実際そういうことがあったらそういうふうになるもんかもね…」という感じの展開を見せるのですが、その芯を繋いで取り巻いている世界が、海が、空が、光と影が、ただただ広くて、圧倒的で、美しくて、そしてそれら全てがラストに向かっていくにつれちっぽけな少女の存在に還って行く感じがすてきでした。とにかく海がね〜。波の音と太陽と月の反射のひかりと、奥行きと怖れと悲しみときらめきがずっと感じられて良かったザマス。うーんすてき。


しかしワタシ十二国記が薬膳鍋でビーンズ文庫系がイチゴのショートケーキだとするならルルルは角砂糖だな(コーヒーや紅茶にすらなってない甘味そのもの…)とか思ってたんですけど、こげな渋いお話ルルルの読者の口に合うのだろーか(^^;)何かラストでポカンとしてるのが見えるような…。


ところで(以下ネタバレなのでしまいます)



キールのこの去っても全く名残惜しくない感じって計算の上でのことなんだろーか(^^;)あくまでペリの女としての心の成長に重きを置いてて、キールはホントに女の子が夢みる王子様ってだけな感じ。いやディズニーに出て来る王子様的な薄さじゃなくて、気分に流されがちというかやや俗というか…。あとリョウがすげえ唐突にそういうことになるのもまた計算なんだろうか(^^;;)日本のエンタメラブ&ラブコメに慣れ切った身としては出て来た時とラスト50P前くらいそーいうニオイをリョウ自身から出しといてくれても…。という気がせんでもない。「キール達がいたから」って何の理由にもなってないよ(^^;;;)あくまでペリの心の成長がメインで、男はロマンチストで自分本位で下心なくして献身なしででもまたそこが可愛げのある所よとゆー感じなんだろーか。うーんある意味正しい少女小説。ルルルの読者は「誰と誰がくっつくのかしら!」が最大の関心事のよーな気もするけど…。