解析の検索ワードとか見るに、評判が悪い割に富士見ファンタジアの新人読み切りということでそれなりに関心は引いているらしい(少なくともガガガの吉祥! GOOD☆LOOKSよりは…)ワタシのちょっとお気に入り・黒乙女 -シュヴァルツ・メイデン- 黒き森の契約者の、方々で言われている「何とも言えない読みにくさ」について考えてみる。
一章の冒頭の1文なんですが。

 その場所を見て、誰もが忘れかけていた異界の伝承を思い出す。
 都市の中心の、最も多く馬車や人が行き交う大通り。レンガ造りの「現代的な」建物たちの片隅にある、おかしな形の木々がおかしな形の蔦を絡ませ合い密集した森だ。


……打ち出しただけで眉間が痛くなって来る勢いだが、めげずにこの文が最低限伝えるべき事を書き出してみる。


都市の大通り。その片隅にある森。


……ああああそうかこの文それが言いたいだけの文なんだよな……と目から鱗を落としたとこで、それにはりついてる情景描写とおぼしき言葉を書き出してみる。


「中心の」「最も」「多く」「馬車や人」「行き交う」「レンガ造り」「「現代的な」」「建物たち」「片隅」「おかしな形の木々」「おかしな形の蔦」「絡ませ合い」「密集した」


そりゃ何読んでんだか分からなくもなるわ。

うーーん批評めいた物言いはキライだけどお値段分は言わせてもらうと、「中心の」と「最も多く馬車や人が行き交う」はどっちかでよくないか? 建物についてる「レンガ造り」と「「現代的な」」は、レンガ造りが現代的のかぎかっこで遮られて浮いててひっかかる。つーかこのカッコの意味は。カッコを付けて現代的な都市の中に森があることを強調しているのなら(というかもしかしてそうなのかと今打ってて気付いた)森に対しての描写がくどすぎて森に辿り着くまでにそのしかけを忘れているつーか。
「おかしな」を2度重ねるのは、「都市」「森」と二つの描写を抱える文の中に入れるのは無理があるというかいたずらに分かりにくくしているだけというか。つーか何故「おかしな形の木々が蔦を絡ませて密集し」じゃいかんの…。あと「絡ませ合い密集した」ってなんかスッと脳に入ってこないような〜。密集してできた森…密集している森…。うーん蔦を絡ませ密集した森か、絡ませ合っている森でよくないか…。あと前の文の「その場所を見て思い出す」を引き受けるのに「森だ」って何か違和感が…。うーん…。という感じで勝手に書いてみると。


 その場所を見て、誰もが忘れかけていた異界の伝承を思い出す。
 都市の最も多く馬車や人が行き交う大通り。「現代的な」レンガ造りの建物たちの片隅にある、おかしな形の木々が蔦を絡ませ密集してできた森。


すっげえ通りがよくなりません? いや、ただのそのまんまな文だけど、伝わらなきゃ元も子もない訳ですよ。自分の味を出したいなら、最低限の言葉の中から選ばなきゃいかんのですよ。ワタシみたいに古文の解体や解読するよーなおせっかいしてくれる読者なんてライトノベル読者にも文芸読者にもいないし。つーか個性とかいう次元じゃないしな…。
ついでにいうとこのお話、キャラクターの会話とか情の書き方はやわらかくて味があってそれなりに立ってます。それと地の文のギャップが最初の頃はキツいですが、半ばになるとここまで面倒な文はなくなって行き、それなりに読みやすくなります。多分上手くなったというより、息が切れて来て余計なことができなくなって却って自然になったんじゃないかと…。つーかアレ!? あまりにも言われたい放題だからフォローを! とか思ったのにワタシが一番ミもフタもない言及してるぞ! なんてこった!!(なんつうありがちな…)「愛のムチ」的な言葉を聞くたび「そう言うこという人程打たれ弱いんだよな…」とか思ってたくせに!
え、えーとそんな訳で次回があったら、シンプルにお願いします! 読みますので!(フォローになってない)