吉原御免状

吉原御免状 (新潮文庫)

吉原御免状 (新潮文庫)

育ての親、宮本武蔵の遺言で単身吉原にやってきた松永誠十郎。25歳まで山の中で剣技だけを磨いて純粋に育った誠十郎は、そこで花街吉原の成り立ちと、幕府と柳生一族の思惑と、清十郎の出自の真実を知ることになる…とかいうお話で、ひじょーに面白かったです。千何百年と続く日本の歴史を綿々と流れる「国家体制(貴族、武士、政府)と従うもの」と「天皇とまつろわぬもの」のありよう…というかまつろわぬものの自由さと哀愁は団塊の世代の琴線をうまいことかき鳴らすのかよく語られるものですが、おおうこう来たかという感じで厳然たる体制と自由な人々のそれぞれの厳しさの違いがお話をひっぱっていて最後まで目が離せませんでした。大樹の幹のように太いお話に、まっすぐで清潔な誠十郎、江戸弁が素敵なパーフェクト老人幻斎、魅力が対照的な花魁・高尾と勝山、暗示のように誠十郎のそばにつき従う少女おしゃぶなどなど魅力的な人々が駆け抜けて楽しかったです。戦国時代から徳川幕府が成り立つ頃の柳生一族のありようも味があったでござる。

ただ、良くも悪くも書いた人も読む人も団塊のおっさん(この辺の世代の女の人ってあまりエンタメ読まないよな)っつーか、「若い女と交信する方法がまぐわいしかないんだろうなあ…」っつーか、濡れ場がまあ多くて前半こそ「きゃー助平」とか思ってましたが後半になると「も…もういいっす…」って感じで胸焼けが(苦笑) お、男の方は色々面倒ごととかかっこいいこととか哀愁とかあるのに女はそれだけ(というわけでもないけど) かよ!ず、ずるいぞ!!(笑) 
あと私は小説は限りなく自分のイメージで読みたい人なのですが、どーしても原哲夫の絵が浮かんで困りました。いいけど。花の慶次とか、影武者徳川家康とか、大昔一回読んだきりだと思うのですが、まことに原哲夫隆慶一郎の世界をのびやかにマンガにしていたことだなあ。